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悠里
「きゃーーーーっ!」
翼
「おっと!」
悠里
「いやぁぁーーっ!」
翼
「落ち着け、担任。そんなに力いっぱいしがみつかなくても大丈夫だ。
おい、お前! その柱の陰にいるお前だ。
担任がこんなに怖がっているのが分からないのか。」
─
「お前が彼女に懐くのは勝手だけど、そこんとこはわきまえろよ。」
悠里
「ちょっ……イルカ相手に何言ってるの!」
─
「相手が何とか関係ねーから!
こいつからは何か面白くないもんを感じる。やけに悠里さんに懐いてるし!」
悠里
「確かにこの子は私の側に寄ってきてくれてるけど……
そもそもイルカと人間じゃどうこうなりようがないでしょ。」
悠里
「……にしてもこのカップケーキ、随分残っちゃったわ……。」
翼
「フン。もっと残っててもいいくらいだ。」
悠里
「なによ、それひどいじゃない! いくら見た目がアレだからと言って。
せっかく先生達のために作ったんだから、もっと食べてもらいたかったのに……。」
翼
「ふざけるな! オマエの手料理を他の男どもに食べさせてたまるか。」
悠里
「へっ?」
翼
「いいか? 今後も俺以外のために手料理を作るのは禁止だ。」
悠里
「……どうして?」
翼
「そんなことは自分で考えろ。大体、あの男性教師に気を許しすぎだろうが。
手料理を食べたいなどと言う戯言は聞き流せ!」
悠里
「(これって……翼君、ひょっとして、ヤキモチやいてくれてる……とか?)」
一
「なあ先生……俺、どうしたらいい?」
悠里
「え、と……。」
「(そんな近距離で囁くように言われたら、全然話の内容が入ってこないって言うか……!)」
「(ド、ドキドキして悩み相談どころじゃないって言うか……こ、これが噂の壁ドンってやつ!?)」
一
「……先生? 相談、乗ってくれねーの?」
悠里
「はっ……あの、その……!」
一
「俺……やばいんだ。ずっと、ドキドキしちまって……。先生は……どうなんだよ?」
悠里
「えっ!? 私……?」
一
「先生だったら、どうするんだよ?」
悠里
「(だからそれ以上顔を近づけないで~~!)」
悠里
「言い出すって……悪いニュアンスを感じるんだけど?
……自分で言うのもなんだけど、って言うか悲しくなるほど虚しいけど……。
私の料理ってその……病人相手にはなかなかハードル高いでしょ?
体調が悪い時くらい、見た目も綺麗なご飯を食べさせてあげたいから……。」
悠里
「(うう……なんでこんなこと自分の口から言わなきゃいけないのよ~~)」
瞬
「……ふっ、くく、アンタでもそんなこと気にするなんてな……。」
悠里
「ちょっと、笑うことじゃないの~~!」
瞬
「別にいい。」
悠里
「えっ……?」
瞬
「どんなに不味くても、見た目がアレでも……先生がオレのためだけに作ってくれるなら……。」
瞬
「それがいい。」
悠里
「(それって……レトルトより私の手料理の方がいいってこと!?
まさか瞬君がこんなこと言ってくれるなんて……すっごく嬉しいかも……!)」
悠里
「じゃあ……次は頑張ってみるね。」
清春
「んなみっともねー顔を晒すンじゃねェよ。」
悠里
「優しいのね、清春君。」
清春
「……マジもんのバカだろ、オメー。」
悠里
「嬉しいけど、やりすぎちゃダメ。イタズラはほどほどが面白いんだから。」
清春
「そいつァ無理な相談だなァ。」
悠里
「相談じゃなくて命令よ。」
清春
「ンじゃ、オレ様からも1個命令だ。」
悠里
「なに?」
清春
「もう今週やんなきゃいけねえでかい仕事は来週の会議の準備だけだろ?」
悠里
「うん。」
清春
「オレ様も今週はゆっくり出来っから、残りはオレ様の相手をすること。分かったか?」
悠里
「それって……。」
悠里
「(もしかして、デートとかそういうこと!?)」
悟郎
「みんな~。センセがすっぴんになったよ~。」
悠里
「(とんでもない公開処刑だわ……。目を閉じていても教室中の視線がつき刺さるのを感じる……)」
悟郎
「まずは下地! それからファンデ! チークはふんわり~!
それから1番大事なアイブロウ。先週教えた通りにやるんだよ~。」
悠里
「はーい!」
悟郎
「センセ、マスカラするから目を開けて。」
悠里
「う、うん。」
悟郎
「ん~、よし。メイクは完成!」
瑞希
「肩、貸して。」
悠里
「……って、聞く前にもう借りてるし。本当にこんなことでいいの?」
瑞希
「……うん。」
悠里
「(ううう、さすがにもう見慣れたと思ってたけど……。
やっぱり、これだけ間近で見ると、迫力あるなぁ。
瑞希君の伸びた髪が、私にかかって……なんかいい匂いする。
まつ毛も長いし、お肌も……。ああ、何か特別なお手入れしてるのかな?
でも瑞希君のことだし、特にしてなさそう……。
私なんて、必死にスキンケアしても荒れるのに)」
瑞希
「……顔、忙しそうだね。」
翼
「担任。」
─
「先生。」
瞬
「先生。」
清春
「ブチャ。」
悟郎
「センセ。」
瑞希
「先生……。」
翼
「改めて。」
B6
「お帰りなさい。」
悠里
「みんな……うん、ただいま!」
翼
「魚料理用の白と肉料理用の赤を用意してある。どちらがいい?」
悠里
「じゃあ、最初は白をもらおうかな。」
悟郎
「なら、ゴロちゃんの作ったスパークリングサングリアがあるよ。」
清春
「そんなタルくてジュースみてぇなのより、コッチだろ。」
悠里
「あ、ウィスキーのコーラ割り。良いウィスキー使ってるわね。
タルの匂いが香ってきて、でも飲みやすくて美味しい。」
─
「ビールもいいのあるぞ。」
悠里
「ああっ、これオレンジのいい香りがする……こっちの黒もいい。」
瞬
「先生は香りが良い酒が好きなんだな。」
悠里
「逆にウォッカとかジンとかは苦手なんだけどね。」
瑞希
「日本酒も、焼酎もある。」
悠里
「ああ、これは濃厚甘口濁り!! 黒焼酎!」
翼
「リクエストがあれば、なんでも運ばせるぞ。」
悠里
「翼君の揃えてくれたのものは、全部美味しいよ。流石ね。」
翼
「フッフッフ。違いの分かる男になっただろう?」